博士論文
論文リスト
1992年
- 河合 晃
- フォトレジストと無機基板との接着機構に関する研究論文概要
- Akira Kawai
2012年
- 森 暁
- 微量添加元素による銅配線材料の界面反応と機械的特性に関する研究論文概要
- Satoru Mori
- Study of interfacial reaction and mechanical properties of copper wire materials by adding a small amount of additive elementsAbstract
2010年
- 宮崎 順二
- 高精度マスク技術による光リソグラフィの延命化に関する研究論文概要
- Junji Miyszaki
- A study of the extension of photolithography by utilizing improvements of photomask technologyAbstract
2007年
- 安江 孝夫
- 走査型プローブ顕微鏡を用いた半導体表面およびデバイス信頼性の評価に関する研究論文概要
- Takao Yasue
- Research on evaluation of semiconductor surface and device reliability using scanning probe microscopyAbstract
2006年
論文概要 / Abstract
フォトレジストと無機基板との接着機構に関する研究
論文概要
1.1の研究の背景でも述べたように、LSIの高集積化と共に接着の問題は重要性を増やしつつある。又、ポリマー自身の接着に関する研究は非常に多いが、熱的に不安定な感光剤を含んだフォトレジスト系での研究が少ないこと、サブハーフミクロン領域での報告が殆どない事から本研究テーマの重要性が認識できる。よって、本研究の目的として次の三点を挙げる。
(1)レジスト微細パターン特有の接着要因を追求する。
(2)従来の接着要因の適用できる範囲を明確にする。
(3)接着力向上、および破壊耐性向上を目的とした新規プロセスを開発する。
まず、研究手法として代表的な接着要因である表面エネルギーの釣合いに注目し、接着挙動を解析している。又、金属基板との接着に多いとされるWBL(Weak boundary layer)理論や、熱応力解析手法として有限要素法を取り入れている。新規の表面解析手法として原子間力顕微鏡(AFM)を導入し、接着力の起源である表面力(原子間力)の解析を行っている。
本論文は、以上を目的として第1章「序論」の他、次に示す8章で構成されている。それらは大きく二つに分類される。2~4章は接着力の発生メカニズムに関し、5~8章は接着破壊に関するものである。
第2章「異なる表面エネルギーを有する無機基板での接着」では、表面エネルギー理論について概説し、その手法として多く用いる接触角法について述べている。LSIに用いられる主な10種類の無機基板の表面エネルギーを求め、フォトレジストとの乾燥化、およびアルカリ水溶液中における接着エネルギーを求めている。接着実験として引っ張り試験と浸漬実験を行い、接着挙動が表面エネルギー理論で説明できる事を確認している。又、2つの環境下での接着挙動は、基板の極性値に対して互いに逆の傾向を示すことを新たに見い出している。これらをもとに、LSIプロセス上接着設計を行うための指針を示している。
第3章「レジスト膜の熱処理と接着挙動」では、フォトレジストの組成、および現像、熱架橋等の各反応について概説し、80~325℃の広範囲で熱処理したレジストの乾燥下、アルカリ水溶液中での接着挙動について考察している。表面エネルギーモデルでは全温度範囲の接着挙動を説明する事はできず、新たな要因としてレジストの膨潤、および溶解を導入している。
第4章「原子間力顕微鏡(AFM)による表面力と接着挙動で」では、接着力の起源とされる表面力(原子間力)をAFMを用いて検出し、これと熱力学的な物理量である表面エネルギーとの相関を見い出している。探針と表面との間には、極性および水素結合的な相互作用が主に働いている事を新たに確認している。又、得られた表面力を用いて任意の組み合わせにおける基板間の表面力を推定し、これと接着挙動との対応を試みた結果、密接な相関があることを見い出している。原子間力顕微鏡の幅広い応用の一つとして、接着挙動のモニタリングツールとしての有用性を示している。
第5章「Al表面の弱結合層(WBL)による接着破壊」では、WBL理論について概説し、Al表面での接着挙動と表面層膜厚との相関を議論している。Al表面層が、接着破壊に深く関わっていると考え、その物性を表面分析によって解析している。又、Al表面での接着挙動は、従来の表面エネルギー理論では説明できない事を確認している。
第6章「レジストパターン内の熱応力分布と接着力低下」では、レジストパターン形状に依存した接着挙動について、有限要素法を用いた二次元熱応力分布で解析している。凹凸、開口などの代表的なパターンについて応力解析を行った結果、レジストと基板界面付近に集中する引っ張り応力が、接着挙動に大きく関わっている事を見い出している。接着破壊要因の中で、この応力集中なかなりの割合を示す事を述べている。
第7章「レジスト膜へのアルカリ水溶液の浸透による接着力低下」では、アルカリ水溶液に浸透中に生ずる接着不良が、この水溶液のレジスト膜中への浸透によって生ずることを示している。アルカリ水溶液の浸透を、電気抵抗法によって検出している。この浸透はレジスト膜内の残留溶媒の存在によって加速されることを見いだし、また浸透量が多いほどレジスト膜の応力が増加し、これが接着破壊の直接原因となっている事を見いだしている。接着力向上のために、真空ベーク法によって残留溶媒量を制御するといった新規プロセスを提案している。
第8章「レジスト膜内でのボイド形成」では、パターン露光中に生ずるレジストボイドについて概説し、その形成メカニズムのモデル化を行っている。形成パラメーターを(レジストと基板間の接着エネルギー)と(レジスト膜の歪みエネルギー)の差で定義した。これを用いる事により、任意のレジストと基板の組み合わせにおけるボイド発生予測が可能である事を確認している。
第9章「結論」では、本研究で得られた結果をまとめている。
微量添加元素による銅配線材料の界面反応と機械的特性に関する研究
論文概要
液晶ディスプレイ用薄膜配線に銅が使用されているが,その密着性や他の特性の改善のため,微量添加元素が検討されている。微量添加元素は,成膜や熱処理によって界面や表面に偏析し,膜内に拡散した雰囲気中のガス種と反応し銅配線膜と基板界面の反応に大きな役割を演じているが,特に雰囲気中の微量ガス成分の影響を含めた界面現象の解析は十分に行われていない。一方,半導体用ボンディング・ワイヤに,金が用いられているが,最近経済的な理由から,硬さや変形抵抗が金に近い特性を有する高純度銅の使用が広まっている。しかし,高純度銅の直進性は,金線より劣るため,微量添加元素による改善が検討されている。このように銅配線材のいろいろな性質の改善のため,微量添加元素の検討は重要である。
本研究では,微量添加元素の界面反応や固溶析出によって,銅薄膜配線や銅極細線が受ける影響を明らかにし,その機構を検討することを目的とする。
本論文は全10章より構成される。第1章は序章である。銅配線材料における微量添加元素のはたらきについて論じる。酸素を含んだスパッタガス中における成膜や窒素熱処理で界面に生成された酸化銅によって密着性を得た銅薄膜配線は,水素を含んだ雰囲気で加熱すると,界面にボイドが発生し,密着性が低下する。耐水素性改善が重要な課題であることを明らかにする。また,数十μm径の微細な半導体用銅ボンディング・ワイヤの直進性の問題は,高純度銅の再結晶温度を高めることで改善できることを述べる。
第2章では,窒素熱処理した純CuおよびCu-Ca合金膜の密着性発現機構について論じる。純Cu膜は真空中では高温(800℃)に加熱してもSiO2と反応しないが,窒素雰囲気中では300℃で界面に酸化銅層が生じ,密着性が改善される。さらに,Cu-Ca合金膜では,純銅より低温(200℃)で密着性が得られ,400℃で窒素熱処理すると耐水素性も改善されることを明らかにする。界面分析結果よりこれらのメカニズムを示す。純銅およびCu-Ca合金膜の試験結果より,微量添加元素であるCaと窒素雰囲気中の酸素が界面反応に重要な役割を果たしていることを示す。
第3章では,スパッタガス中の酸素が,Cu膜中の酸素や密着性,および比抵抗に与える影響について明らかにする。また,酸化銅を添加したターゲットでスパッタ成膜し,その結果を明らかにする。
第4章では,スパッタガスに酸素を添加すると密着性が改善される機構について論じる。スパッタガスに酸素を添加すると,Cu2Oの分散した微細な組織を有するCu膜が形成され,このCu2OがSiO2へ拡散し,界面に微細な凹凸が生じ,アンカー効果が得られることを明らかにする。
第5章では,Cu-Ca合金膜中のCaが,Cu2Oを含んだCu膜の耐水素性改善に有効であることを明らかにし,さらにそのメカニズムについて論じる。酸素含有雰囲気で成膜したCu-Ca合金膜を水素含有雰囲気中で加熱すると,銅膜中に発生した水がCaによって界面に安定化され,マイクロボイド発生の防止に有効であることを明らかにする。
第6章では, Cu-Ca膜中のCaは,純Arスパッタガスによる成膜では膜にほとんど含有されないが,酸素を添加したスパッタガスでは膜のCa濃度はターゲットのCa濃度に近づくことを明らかにし,この機構を解明する。10数種類の二元系銅合金ターゲットの成膜試験結果を基に,気化潜熱の小さい添加元素は物理吸着し難く,さらにCu中への固溶限も膜組成に影響を及ぼすことを示す。
第7章では,密着性に影響を及ぼす膜の内部応力について論じる。ArスパッタガスではCu膜は引張応力を示すが,スパッタガスに酸素を添加すると圧縮応力に転じることを明らかにする。また,これ等を堆積した二層膜の膜厚を調整することによって,内部応力の低減が可能であることを示す。
第8章では,Ca添加による純Cu膜の機械的特性の変化を調べるため,熱処理前後のCu-Ca合金膜の硬さを測定し組織を観察した。その結果,Ca添加による粒成長促進効果および硬さに与える影響を明らかにする。
第9章では,銅塊の研究で得られた微量添加元素Bの知見を,数十μm径の微細な半導体用高純度銅(99.9999at%Cu)ボンディング・ワイヤに応用した結果について論じる。銅塊ではBは固溶すると再結晶温度は上昇し,高温強度を高める。一方,析出すると軟化することが知られている。ワイヤ部は再結晶温度が上昇し直進性が改善され,ワイヤ先端に放電加熱で形成されるボール部は,高純度銅より柔らかくなり,接合性も改善することを明らかにする。
第10章では結論を述べる。 本研究であらたに得られた金属薄膜・極細線加工プロセスに関する知見によって,今後の銅配線材料のみならず,新たな異種材料間の接合技術の開発や,その技術を応用した金属とセラミックス等の複合材料開発,およびμmレベルの微細部品開発のブレーク・スルーに資すると結論する。
Study of interfacial reaction and mechanical properties of copper wire materials by adding a small amount of additive elements
Abstract
Copper is employed as thin film interconnects for liquid crystal displays. Effects of small amount of additive elements in the film have been studied to improve adhesion to oxide substrates and other properties. Though the elements play an important role in interfacial reaction between the film and the substrates, mechanisms of the reaction with gaseous elements in annealing atmospheres haven’t been studied sufficiently. Meanwhile, gold bonding extra-fine wire has been used for semiconductor. Recently high purity copper extra-fine wire whose hardness and other mechanical properties are close to gold has begun to be employed as substitution of the gold wire for economical reasons. One of the weak points of the copper wire is that the loop shape stability is inferior to that of the gold wire. Effects of small amount of the additive element have been studied to improve the loop stability. Thus, small amount of additive elements are very important to investigate the mechanism and improve the properties of these copper interconnects.
The main objective of this thesis is to clarify the effects of small amount of additive elements on the copper films and the copper wire by the interfacial reaction, solution, diffusion and segregation of the elements.
This thesis consists of 9 chapters. First chapter is introduction. The effects of small amount of additive elements are discussed in this chapter. Copper oxide is formed at the boundary between the substrate and the film during heat treatment in nitrogen, and adhesion of the film is generated by the oxide. However, the degree of the adhesion decreases and the film can be easily removed after hydrogen annealing, which occurs in associated with micro-void formation at the boundary. It is clarified that the importance of the durability of the adhesion against the hydrogen annealing. And, it is also shown that the loop stability of high purity copper bonding wire is improved by rising the recrystallization temperature.
In chapter 2, it is stated that the mechanism of adhesion enhancement of pure copper and copper-calcium alloy films by the nitrogen annealing. Though the pure copper film doesn’t react with SiO2 and doesn’t adhere tightly even if annealed at elevated temperature, 800ºC, the pure copper film does tightly by annealing in nitrogen at only 300ºC. The copper-calcium alloy film adheres tightly to SiO2 at the lower temperature, 200ºC. The durability of hydrogen annealing is improved by the nitrogen annealing of copper-calcium alloy film at 400ºC. The mechanisms of these results are clarified by the results of analyses of the interfaces. These results indicates that small amount of additive element (calcium) strongly effects the interfacial reaction between the copper film and the substrate.
The effects of the oxygen content of the sputter gas on the film properties, for example, oxygen content, adhesion, resistivity, are discussed in chapter 3. A copper film deposited from a copper target which contains cuprous oxide is also investigated in comparison with the film deposited from a pure copper target in the sputter gas with oxygen.
In chapter 4, interfacial structure of a double layer copper film, composed of an under-layer deposited on SiO2 in Ar-10vol%O2 followed by an upper layer deposited in pure Ar, is investigated. Addition of oxygen to the sputter gas generates fine grain structure with Cu2O in the under-layer. Cu2O dissolves in the SiO2, and forms CuO-SiO2 eutectic during the deposition. The dissolution of Cu2O in SiO2 must increase anchor effect and adhesion.
In chapter 5, it is demonstrated that sputter-deposited films with an intermediate oxide layer produced from a copper-calcium alloy target are adhesive even after hydrogen annealing. Annealing in the atmosphere with hydrogen, water generated from the intermediate oxide layer is stabilized by calcium at the interface. That is, micro-void formation is prevented by small amount of additive element, calcium, in the film.
Depositing in pure Ar sputter gas, calcium concentration in the copper film from Cu-1at%Ca target is only a few hundred wt%ppm. But on the contrary, depositing in Ar-10vol%O2, the calcium concentration in the film is close to that in the target. The mechanism of the results is studied in chapter 6. More than a dozen of copper binary alloy film compositions are compared with those of targets. From these results, it is indicated that the latent heat and maximum solubility of calcium in copper are smaller than other elements, which inhibit the adsorption of calcium on copper film.
In chapter 7, film stress which affects the film adhesion is discussed. It is revealed that addition of oxygen in Ar sputter gas changes the film stress from tensile to compression. And it is also shown that the double-layer film consisting of these can make the stress decrease.
In chapter 8, it is discussed that the application of technical expertise obtained from copper bulk study regarding small amount of additive elements, B, is applied for improvement of mechanical properties of high purity extra-fine copper (99.9999at%Cu) bonding wire. It is known that making the solid solution of the small amount of additive element, B, raises the recrystallization temperature and strengthens the wire, and separating B from solid solution lowers the temperature and causes softening of it. Addition of small amount of B as a solute element to the wire increases the recrystallization temperature, and stabilizes the loop shape stability. It is clarified that a boll which formed at the end of the wire softens and increases the bondability.
Conclusions are stated in chapter 9. The findings of thin metal films and extra-fine wires process can contribute as technical breakthrough not only for future copper interconnects in electronics, but also for future bonding process for heterogeneous materials and future materials for metal-ceramics composite materials and microscopic parts.
高精度マスク技術による光リソグラフィの延命化に関する研究
論文概要
半導体デバイスの微細化は、すでに物理限界に近い領域に達しており、単に微細化を進めるだけでなく、その特性ばらつきを如何に制御するかが非常に重要な開発課題となっている。光リソグラフィは半導体デバイスの微細化に必須の技術であり、その延命化は重要な課題である。先端リソグラフィの技術は、多くのプロセス技術の集積によって構築されている。個々のプロセス技術の開発は継続的に行われているが、マスク、転写、エッチングといったプロセス全体を通じての最適化は例を見ない。そこで、本研究では、従来とは異なり、リソグラフィ全体を一体と捉え、特に露光システムとフォトマスクを一体と見なしてフォトマスクに必要な精度を検討する。必要かつ十分な精度とは何かを議論することで、光リソグラフィの延命化に必要なフォトマスク精度を明らかにする。特に、位相シフトマスク技術とダブルパターニングリソグラフィは、光リソグラフィを延命化する重要技術であり、今後の半導体の微細化を支えていく技術となる。そこで位相シフトマスクやダブルパターニングに特有なフォトマスクへの要求性能について検討する。これらを通して現行の光リソグラフィが、ダブルパターニングからEUVへと進化していく過程における高精度フォトマスクの役割を示す。また光リソグラフィの半導体以外の分野への応用もその技術の延命化として重要である。MEMSデバイスは近年重要なデバイス分野となっているが、MEMSデバイスへの光リソグラフィの応用には、MEMS特有の開発課題がある。特に単結晶シリコンの異方性ウエットエッチングは三次元構造の作成に必須の技術であるが、一方その異方性のため、マスクとエッチング後形状が一致しないという特性がある。そこで、異方性ウエットエッチングにおける、マスク忠実度と欠陥転写特性を明らかにすることを目的とする。
本論文は、全六章から構成される。第一章では、光リソグラフィの微細化の現状と今後の延命化技術について述べ、高精度フォトマスクの光リソグラフィの延命化における重要性を論じる。第二章では、光リソグラフィの延命化に必要なフォトマスクの要求精度について論じる。フォトマスクに要求される最も重要な特性は、パターン寸法ばらつきとフォトマスク基板の平坦性である。パターンの寸法ばらつきは、ラインエッジラフネスに着目して、その繰り返し周期が光学系のカットオフ周波数以上であっても光学像のコントラストを劣化させることを明らかにする。フォトマスク基板の平坦性に関しては、その平坦度とウエハに転写される焦点位置への影響を検討し、露光装置において補正される傾斜成分と湾曲成分補正後の平坦度がウエハ上の焦点位置ばらつきと一致することを実験的に確認する。第三章では、新規に開発・実用化した単層膜減衰型位相シフトマスクに関して論じる。単層膜で減衰型位相シフトマスクを実現するために必要な単層膜に求められる屈折率と消衰係数の関係を明らかにし、反応性スパッタ法により、その条件を満たす単層膜を形成し単層化が可能であることを示す。また、本位相シフトマスクを実用化する際に課題となる露光領域外の遮光を微細ホールパターンを用いて行う方法を提案する。この単層膜減衰型位相シフトマスクを用いて、リソグラフィのプロセス余裕度の改善効果を示し、また位相シフトマスクに特有の位相誤差と焦点面変動の関係を論理的に解明し、実験により確認する。これらの知見に基づき、位相シフトマスクに求められる透過率誤差と位相誤差の許容値を明らかにする。第四章では、光リソグラフィの延命化技術であるダブルパターニングリソグラフィに関して論じる。ダブルパターニングリソグラフィでは、ハードマスク層の成膜やエッチングの工程など複雑なプロセスが必要となる。そこで、ダブルパターニング用フォトマスクの精度を評価する新規手法として、ハードマスク層の成膜や、エッチングが不要であり、簡便でかつ有効な手法を提案する。これは二重露光法を用いて形成したパターンを使用してダブルパターニングリソグラフィをエミュレートする手法であり、本手法により現状のフォトマスクがダブルパターニングリソグラフィにおいて十分な寸法精度と位置精度を達成可能であることを示す。第五章では、単結晶シリコンの異方性ウエットエッチングにおける、マスク忠実度に関して論じる。異方性ウエットエッチング中のマスク形状とエッチング形状の関係を明らかにし、その新規補正方法を提案する。さらに、この補正方法によりエッチング後に高精度に設計形状が得られることを実験的に確認する。またマスクに異物が付着した際に発生するパターン残り欠陥に関して、擬似欠陥マスクを用いて、その欠陥転写特性を明らかにし、その欠陥許容度を明確にする。最後に第六章にて、本研究で得られた結果を総括し、これらの知見が光リソグラフィの延命化における高精度マスクの開発の指針を示す。
A study of the extension of photolithography by utilizing improvements of photomask technology
Abstract
It would be advantageous for leading-edge semiconductor devices to shrink beyond the resolution limit imposed by photolithography. The most advanced lithography process is approaching its physical limits and several extension technologies such as extreme ultraviolet lithography or double patterning lithography have been proposed. An optical projection system is used in the semiconductor lithography process. The photomask is the plate from which electronic device circuit patterns are transferred to the wafer to create semiconductor chips. Characteristics of the photomask can strongly impact lithography performance since it is part of the optical system. We would like to present an extension of photolithography by utilizing improvements of photomask technology. Another application of photolithography is also important as an extension of photolithography. Micro-Electro-Mechanical Systems (MEMS) are expected to play a key technological role in the development of various new devices. Anisotropic wet etching is widely used in MEMS fabrication processes to fabricate the three dimensional structure. As this etching has a different etching rate for each crystal lattice face, it is known that the etched window shape changes during etching. We would also like to present characteristics of anisotropic wet etching from the view point of mask fidelity.
Backgrounds of this thesis are described in Chapter 1. In Chapter 2, the impacts of photomask accuracy on lithographic characteristics are discussed. There are two major requirements for the photomask: one is control of mask pattern size variation, and the other is substrate flatness. It is known that a line edge roughness (LER) of the mask pattern with a spatial frequency higher than a cut off frequency of the projection optics does not cause pattern size variation on a wafer. However, it is found that the LER with a spatial frequency higher than a cut off frequency affects aerial image contrast, which worsens the process window of lithography. A low spatial frequency of substrate flatness variation could result in image plane deviation (IPD). It is demonstrated that the flatness of the exposure area after tilt and curvature correction directly corresponds to an image plane deviation on a wafer. We propose a new specification of substrate flatness based on this knowledge to improve IPD on the wafer. In Chapter 3, an attenuated phase-shifting mask (att-PSM) with a single-layer absorptive shifter film is developed. The optical parameter of this film can be controlled by the condition of film deposition. A new shielding method was also developed using a sub-resolution pattern at a surrounding area of the exposure field. It is important to control phase and transmittance for att-PSM lithography. A relationship between phase error and best focus position is demonstrated. Requirements of phase and transmittance control are also indicated. In Chapter 4, a double patterning lithography utilized to break the resolution limit of lithography is investigated. There are some barriers concerning evaluation of the photomask for double patterning because it includes a hard mask film deposition and a dry etching process. We proposed a new photomask evaluation method for double patterning to analyze the photomask performance with an easy and simple procedure using a double-exposure technique. Results showed this method is useful in determining the impact of mask overlay and pattern size error on double patterning lithography. We evaluate the current mask performance using this method and demonstrate that both overlay and pattern size error is capable of meeting the requirements for double lithography. In Chapter 5, an anisotropic wet etching method for crystal silicon is investigated. Anisotropic wet etching has a different etching rate for each crystal lattice face, and the etched window shape changes during the etching. The fidelity of the mask shape is investigated. Deformation during etching for a circular mask is demonstrated, and a new simple mask correction method is proposed. It is shown that this correction method is useful in making a trial MEMS device. It is also important to understand printability of defects. The impact of opaque-defects on an etched structure is investigated. It is shown that a minimum defect size which does not affect the final structure is around half of the total etching depth. Finally, in Chapter 6 we summarize results and present a guide to extend photolithography by utilizing photomask technology.
走査型プローブ顕微鏡を用いた半導体表面およびデバイス信頼性の評価に関する研究
論文概要
半導体メモリの高集積化が進行し、果てしない開発競争が世界中の半導体メーカー間で繰り広げられている。スケーリング則に従い、MOS構造トランジスタで使用するシリコン酸化膜厚は益々薄くなり膜中電界強度が増加し、基板との界面構造がトランジスタ特性や信頼性に大きな影響を与える。このため、半導体製造プロセスが半導体材料表面に及ぼす微細な形状変化や局所的特性変化を定量的に捉え、この変化がデバイス特性に及ぼす影響を明確化することは非常に重要である。本研究では上記視点に立ち、表面の微細形状変化のみならず局所的な吸着力、電気特性、更には局所加工が可能な走査型プローブ顕微鏡を用い、様々な半導体表面およびデバイス信頼性の評価に関する研究を行った。
第1章では走査型トンネル顕微鏡(STM)や走査型トンネル分光(STS)を用いて、イオン注入されたシリコン基板表面のナノメーターオーダーの形状変化を評価すると共に、フッ酸洗浄により水素終端したシリコン基板表面の局所的な電気特性を明らかにしている。最初に、イオン衝突がシリコン表面に与える形状変化を真空中STM用いて評価した。イオン衝撃を加えることにより、シリコン表面に異なる凹凸が現れ、20~200keVのイオン注入エネルギー範囲では、表面凹凸差がエネルギーの増加と共に増加し、クレーターの深さも増加することが分った。次に、STS によりフッ酸洗浄により水素終端したシリコン基板表面の局所的な電気特性を明らかにした。微分コンダクタンスの面内分布から水素終端領域と酸化領域を明確に区分し、前者領域のI-V特性が典型的ショットキー・バリア・ダイオード特性を示し、バンド曲がりに基づくMIS理論により説明できることを明らかにした。一方、後者の酸化領域では電子伝導は表面準位に支配され、フェルミレベルは表面でピンニングし、電圧降下が半導体と酸化膜間で生じていることが分った。
第2章では、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面微細形状を観察すると共に、Force-Curve測定法を併用して微細形状と表面吸着力との相関性を調べ、半導体用レジスト密着性への影響を定量化した。最初に、SC1洗浄による表面マイクロラフネスの変化をAFM 観察し、SC1洗浄が表面マイクロラフネスを増大させ、これに伴い酸化膜中電荷の捕獲効率が増加し、MOSトランジスタ動作におけるホットキャリア効果の影響を受け易くすることが分った。また、化合物半導体であるInGaAsP上のInPエピタキシャル成長面のAFM 観察も行い、成長初期過程で下地中Asの外部拡散によりInPの結晶性が乱れること、十分な膜厚に達すると明瞭な原子ステップが現れ、<111>方向に走ることを確認した。次に、AFM探針を試料表面で上下させるForce-Curve測定法をプロセス条件の異なる反射防止膜(ARC)用TiN 膜に適用し、フォトレジスト密着性が表面ラフネスや表面吸着力に強く左右されることを定量化した。また、GaAs ICプロセスにおけるSiON膜上のレジスト剥がれ不具合の原因調査にも適用し、レジスト密着性が良好な膜ほど表面マイクロラフネスが小さく、吸着力が大きいことが分った。更に、本手法を面内で展開し表面付着力分布測定法を考案し、InP表面にHBr処理+水洗処理を行った表面や、InGaAsP基板上のレジスト表面の付着力分布を可視化し、分布が材質により異なることを明確にした。
第3章ではSTMやAFMの機能を合わせ持った走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用い、電界誘起酸化法で局所加工したシリコン酸化膜の電気特性を明らかにすると共に、走査型プローブ顕微鏡のプローブ電流をモニタすることにより,酸化膜の絶縁破壊現象を直接評価する方法を開発し、絶縁耐性が製造プロセスの違いにより影響を受けることやパターン内で位置依存性を持つこと、ドライエッチングの有無が酸化膜信頼性に影響を与えることを明らかにした。最初に、SPMを16Mフラッシュメモリのトンネル酸化膜に応用し、絶縁破壊の90%が分離酸化膜のエッジ部分に集中することが分った。これは、エッジ部分のトンネル酸化膜が、自身の薄膜化やシリコン界面でのキンク等の物理的要因により絶縁耐圧が低下しているためであり、従来TEG による電気特性結果とも一致している。次に、SPM探針を用いて局所加工したシリコン酸化膜の電気特性を測定した。加工領域では、酸化膜成長による「膜厚増加」と「電流値減少」が見られ、I-V特性のFNプロットが直線性を示し、伝導メカニズムがFNトンネリングであることを示唆した。また、直線の傾きから算出したバリアハイト値は、通常のMOS構造の値と一致した。一方、非加工領域のFNプロットは直線からずれ、電子伝導は直接トンネル理論によることを示した。次に、13nm 厚のシリコン酸化膜絶縁破壊特性を評価するにあたって、酸化膜中キャリアの影響を受けない絶縁耐圧測定を行った。その結果、耐電圧差は16.5~16.7Vの0.2V(1%)以内で、ほぼ均一となった。本手法を基板結晶の異なる二つの酸化膜に適用し、両者の絶縁破壊中心電圧が0.2Vずれることから、基板結晶が絶縁耐圧に影響を及ぼすことを検証した。さらに、絶縁破壊電圧がパターン内で位置依存性を持つことも分った。これらからシリコン酸化膜の絶縁破壊電圧が、酸化膜自体の絶縁電圧と、界面構造の不均一性や不完全性両者に影響を受けていることが分った。最後に、膜厚9.5nm のシリコン酸化膜の経時絶縁破壊特性について調べた。測定結果をワイブル・プロットし、印加電圧サイクル数に対する累積不良率を求めたところ、不良率が直線上に分布し、形状パラメータが印加電圧によらず一定で、故障モードが変わっていないことから、酸化膜の経時絶縁破壊特性測定にも十分適用できることが分った。本手法を、プラズマ・ダメージを加えたものと加えていない2種類のシリコン酸化膜に適用し、両者の平均寿命が、実用である1~6MV/cmの電界強度領域において異なり、プラズマ・ダメージを加えることで膜の平均寿命が短くなることが分った。
本研究により、半導体材料表面の微細形状変化、局所的な吸着力や電気伝導、酸化膜絶縁破壊特性に関する知見が多く得られており、今後の最先端半導体開発におけるデバイスの信頼性向上に貢献すると考えられる。
Research on evaluation of semiconductor surface and device reliability using scanning probe microscopy
Abstract
High integration of semiconductor memory advances and an endless development competition is developed among the chip makers in the world. According to the scaling law, the silicone oxidization film thickness used with a MOS structure transistor is still thinner. Thereby, the electrical field intensity in a film increases and interface structure with a substrate has big influence on transistor characteristics or reliability. For this reason, it is very important to clarify the influence catches quantitatively a detailed form change and local characteristic change which a semiconductor manufacture process exerts on the semiconducting material surface, and this form change affects the device characteristic. In this research, from an above-mentioned viewpoint, evaluation of various semiconductor surfaces and device reliability was done using a scanning probe microscopy (SPM) in which a surface detailed form change, local adsorption power, the electrical property, and partial processing is possible.
In Chapter 1, while evaluating form change of the nano-meter order of the silicon substrate surface by which ion implantation was carried out, the local electrical property of the silicon substrate surface which carried out the hydrogen terminus by HF acid washing is clarified using the scanning tunneling microscope (STM) and scanning tunneling spectroscopy (STS). First, the surface flatness change exerted on the silicon surface by the ion collision, which is one of the semiconductor process technologies, was evaluated using STM in vacuum. By adding an ion collision to Si (100) surface, clearly different unduration from the surface that did not add ion bombardment appeared. It turned out that surface micro-roughness increases with the increase in ion implantation energy, and ion implantation energy also increases the depth of crater along with it in the range of 20keV-200keV. Then, STS was applied in order to clarify the characteristic of the partial oxidization silicone surface, which carried out the hydrogen termination. Lateral distribution of the differential conductance in current imaging tunneling spectroscopy (CITS) images revealed the existence of two parts in the silicon surface, namely Hydrogen-terminated area and oxidized area. The current-voltage (I-V) characteristics in the former area represent that of an ideal Schottky barrier diode, which can be explained by the metal-insulater-semiconductor (MIS) theory based on the band bending on semiconductor. In the latter area, however, the I-V curve is symmetric and no band bending is observed. In this case, conduction is dominated by the surface states, and most of the voltage drops between the metal and semiconductor occur across the oxide layer. Through the present CITS work, surface undulation as well as the distribution of locally oxidized areas has become clear. From the distribution within a field of a differential conductance, Si surface was clearly classifiable into the hydrogen terminus area and the oxidization area.
In Chapter 2, while observing surface detailed form using the atomic force microscope (AFM), the Force-Curve measuring method was used together, the correlativity of detailed form and surface adsorption power was investigated, and the influence on the photoresist adhesion nature for semiconductors was quantified. First, AFM observation investigated change of surface micro roughness by SC1 washing, and it investigated about the electron capture center of Si/SiO2 system resulting from micro roughenss. It turned out that SC1 washing increases surface micro roughness, and with increase of this surface micro roughness, it also turned out that the capture efficiency of the electric charge in an oxidization film increased, and it is easy to be influenced of the hot carrier effect in MOS transistor operation. Moreover, AFM observation was performed to the surface, which grew InP epitaxially on InGaAsP that is a compound semiconductor. In an initial process of epitaxial growth, since As in InGaAsP of a ground was spread outside, it checked that the crystallinity of InP was confused. On the other hand, when sufficient film thickness was reached, the clear atomic step of InP appeared and it also checked that this atomic step was running in the <111> directions. Next, the absolute value of the force committed between a measured sample and probe was calculated with the Force-Curve measuring method at the time of AFM observation. A Force-Curve measuring method is the method of measuring the amount of bending of the canti-lever to the amount of direction displacement of Z of a sample by changing the relative position of the sample surface and probe. This technique was applied to the TiN film for anti reflective coating (ARC) with which process conditions differ, and it applied to quantitative evaluation of relationship between micro-roughness and adhesion force on the surface of a film. Consequently, it became clear quantitatively that the adhesion nature of the photoresist of the TiN film for ARC is strongly influenced in surface roughness or surface adsorption force. Moreover, the Force-Curve measuring method was applied to cause investigation of the photoresist-peeling fault on the SiON film in a GaAs IC process. The photoresist adhesion nature of a SiON film was strongly influenced in surface roughness or surface adsorption force by the surface micro roughness evaluation using AFM, and the surface adhesion force evaluation by the Force-Curve measuring method, surface micro roughness was as small as the film with good photoresist adhesion nature, and it turned out that surface adsorption force is large. Furthermore, the Force-Curve measuring method was developed in the field, and the distribution image measuring method of surface adhesion was developed. With this measuring method, the adhesion distribution on the surface which was performed HBr processing + flush processing on the InP as-grown surface, and the surface of a resist pattern of the InGaAsP substrate surface was clarified, and it caught clearly that the adhesion on the surface of a sample changed with quality of the materials.
In Chapter 3, using SPM having the function of STM or AFM, the electrical property of the silicone oxide which carried out partial processing by the field induced oxidizing method was clarified. By carrying out the monitor of the probe current of a SPM, the method of carrying out the direct valuation of the dielectric breakdown phenomenon of an oxidization film was developed. It was shown clearly that dielectric strength has position dependability within being influenced by the difference in a manufacture process, or a pattern by this technique, and that the existence of dry etching affects oxidization film reliability. First, SPM was applied to the tunnel oxidization film evaluation of a test element group (TEG) pattern and a memory cell pattern produced by the process flow of 16Mbit flash memory device. In the observation result of a series of tunnel oxidization films, it turned out that 90% of the breakdown generating part is concentrated on the edge portion of a field separator oxidization film, and it is easy to carry out the dielectric breakdown of the oxide film of field separator edge as compared with other portions. This reason is easy to generate breakdown according to physical factors, such as kink at Si-SiO2 interface, or a tunnel oxide film's own thinning in a field edge portion. This is in agreement also with the general knowledge from the electrical property result of having used the conventional TEG pattern. Next, using SPM, we have modified a silicon surface and measured its I-V characteristics. In the modified area, both an increase in film thickness and a decrease in current caused by field-induced oxidation (FIO) have been observed. The I-V characteristics of the FIO film show a good fit to a Fowler-Nordheim (FN) tunneling current model. The barrier height determined by a FN plot shows a good agreement with that of conventional MOS structure with thermal thick silicon-oxide. Furthermore, the applicability of SPM in the dielectric breakdown characteristics of silicon oxide has been demonstrated. Our study demonstrates that the measurement on the oxide is free from the effect of trapped charge created by FN tunneling when a sufficient distance is maintained between the measuring points. In this condition, for a 13nm-thick oxide, the dielectric breakdown voltages were found to be so uniform as to fluctuate only 1%. We applied this method to oxides on the wafers from two different vendors, and found that the dielectric breakdown strength of the oxide depends on the difference on the Si substrates. We also applied this method to a square oxide pattern surrounded by a field oxide, and the result was that the dielectric breakdown strength of the oxide on the edge is lower than the one in the center. And finally, the applicability of SPM in the time dependent dielectric breakdown (TDDB) characteristics of silicon oxide has been demonstrated. Our study demonstrates that cumulative failure rates by the Weibull plot of TDDB measurement results for 9.5nm-thick oxide were found to be straight lines and shape parameters were not based on bias voltages, but they were almost fixed. These results indicate that failure mode within the limits of these voltage conditions has not changed and the SPM method can be applicable to the evaluation of TDDB characteristics of silicon oxide. We also applied this method to oxides on a silicon substrate surface with and without damage by plasma etching. The life expectancy in a real working voltage domain was searched for, and it presumed that a difference arose in these.
Many knowledge about the detailed form change on the surface of a semiconducting material, local adsorption power, or electrical conduction and the dielectric breakdown characteristic of oxidization film is acquired by this research, and it is thought that it contributes to the improvement in reliability of the device in the latest future semiconductor development.
先端リソグラフィにおける薄膜レジスト及び関連材料の機能性評価に関する研究
論文概要
微細加工の進展によりレジスト及び関連材料の薄膜化が必要となっている。膜厚と加工線幅に関する2次元的な軽薄短小化は、レジスト及び関連材料に関する機能性評価の重要性と機能性評価そのものの難易度を高めている。半導体デバイス製造に関わる先端リソグラフィ分野において要求加工寸法が100ナノメートル以下の領域に入ってきているため、これら機能性評価に一層の信頼性向上が要求されている。本学位論文では先端リソグラフィとして有望視される電子線リソグラフィと液浸リソグラフィに着目し、薄膜レジスト及び関連材料の機能性評価に関する研究について報告する。
第1章では、先端リソグラフィ分野におけるレジスト及び関連材料への要求特性とその背景について記述する。第2章では、電子線レジスト評価に注目し直接描画装置と米国ベル研究所にて開発されたSCALPELを利用した解像性評価に関する研究について記述する。ポジ型とネガ型の両タイプのレジストについて、350ナノメートルの膜厚で100ナノメートル前後のパターン解像特性を評価した。電子線リソグラフィに関して特にその微細解像性が注目を集めているが、100ナノメートル未満での加工寸法においてプロセス余裕度とピッチ依存性等の材料特性が実際の量産化に向けた制約要因となることを示した。第3章では、液浸リソグラフィにおけるレジスト成分溶出に着目した研究に関して記述する。レジスト成分の溶出現象は、液浸リソグラフィ時のレジスト解像性能に影響を与えるばかりでなく、露光光学系のレンズ汚染を引き起こす懸念が指摘されている。本章では水を媒体とした液浸リソグラフィを想定し、200ナノメートルのレジスト膜厚についてレジスト成分溶出に関する評価を行った。得られた溶出物量は10マイナス12乗モルの検出感度を達成するとともに単位面積での規格化にも成功した。レジスト材料面では、レジスト中の感光剤成分である酸発生剤の化学構造依存性、具体的には酸発生剤の陰イオン炭素鎖長に関する露光未露光部での溶出挙動の逆転現象を確認した。ベース樹脂中に含まれるフッ素含有比率と溶出量の違いについても指摘した。また本評価方法を活用することでレジストプロセスの改善による溶出量低減についても検討を行った。前洗浄によるプロセス改善について未露光部で90パーセント程度の酸発生剤分解物低減を確認した。露光部の溶出物量との比較から溶出挙動の露光依存性も確認した。現像可溶型のトップコート(上層保護膜)プロセスについて検討を加え、露光の有無にかかわらず約90パーセント以上の溶出物低減効果を確認した。第4章では、液浸リソグラフィ用トップコートの物質透過性に関する研究について記述する。実際のトップコート適応膜厚は剥離あるいは現像溶解時の負担軽減から数十ナノメートル程度まで薄膜化される。そのため信頼性確保の観点から水浸漬下におけるトップコートの膜物性を解析することが望まれている。その一方で膜物性とその変化を追跡する直接観察手法において、薄膜評価時の検出感度あるいは時間解像性が問題として指摘されている。そこでフッ酸によるシリコン基板食刻による間接的評価方法を開発するとともに、モデルトップコートを調合し膜厚30ナノメートルまでの物質透過挙動に関する特性評価を行った。間接的手法である点を利用し、薄膜中におけるフッ酸透過挙動をシリコンの表面変化として捉えることに成功した。表面エネルギー変化の測定、そして原子間力顕微鏡(AFM)を解析手法として活用した。AFMによるシリコン基板表面の特徴的な円形紋様から、トップコート膜中の粒塊空隙にてこの透過現象が起こると示唆した。第5章では、前章のモデルトップコートの物質透過挙動について濃度・膜厚・温度の条件を変化させ、膜物性としての特性研究について追述する。本評価においてフッ酸濃度と透過時間との関係から透過は拡散挙動として起こることを検証した。その30ナノメートル膜厚の拡散係数は、摂氏20度における0.5重量パーセントの希フッ酸水溶液浸漬下で、1秒間当たり1x10マイナス17乗平方メートルと求められた。
電子線リソグラフィにおけるレジストの機能性評価において、100ナノメートル以下の微細解像特性とともにプロセス余裕度そしてピッチ依存性評価の重要性を示した。液浸リソグラフィにおける機能性評価において、レジスト成分溶出に関する評価方法を確立することで材料とプロセスの両面から溶出量を議論した。またモデルトップコートを利用しフッ酸によるシリコン基板食刻による間接的評価方法を開発することで薄膜中における拡散挙動を明らかにした。本研究内容は、先端リソグラフィにおけるレジスト及び関連材料の機能性向上に貢献するとともに、先端半導体デバイス量産プロセスの信頼性確保に大きく貢献するものと期待される。
A study on functionality characterization of thin-film resist and relating materials for emerging lithography
Abstract
Continued demands for miniaturization of features for fine patterning also requires increasingly thinner resists. This two fold task, reduction in feature size and reduction in resist thickness, demands more refined characterization of resist especially in the lights of nanotechnology and emerging lithography. This thesis addresses the characterization of resists for electron beam (EB) lithography and immersion lithography. In the case of EB resist the characterization was carried out with a direct write electron beam exposure tool and a SCALPEL system developed by Bell Laboratories in the US. The studies involved working with patterns around 100 nm on a simple stack of 350 nm resist. It seemed that the available process latitude and pitch dependency of the evaluated resists could pose limitations to any high-volume manufacturing process. In the case of immersion lithography the resist characterization involved resist component elution that could adversely affect the quality of resist patterns, as well as could also cause contamination to the lens of the exposure tool. Regarding resist component elution, it has been successfully characterized for the detected elution molar amount of less than one part per trillion where the characterization was carried out for a film thickness of 200 nm, and where the elution amount was normalized with one square centimeter of resist film. The studies also pinned down the information on the structural dependency of film on photo acid generator (PAG), and the differences among the various base polymer types. From the standpoint of resist process modification, a presoaking procedure was found to reduce the elution of PAG ions in unexposed region by around 90 %. However, the presoaking did not seem to reduce the elution of ions in the exposed region of resists. For the topcoat characterization of substance penetration, an indirect method with fluoric acid (HF) etching on silicon substrate was developed and was employed to examine a 30 nm thick film of hydrophobic material. The advantage of this indirect approach was to be able monitor rapid changes in the film, as if taking and saving pictures of the continuous changes onto silicon substrate. From the result of the HF concentration dependency investigation it was learned that the HF aqueous penetrated the topcoat under the mechanism of diffusion. Results form Atomic Force Microscope (AFM) studies suggested that the penetration occurred through the meniscus of topcoat aggregates where the printed circular patterns on silicon surface were observed. The diffusion coefficient was found to be 1x10-17 m2/s in the case of a 30 nm thick film on a substrate where the substrate was dipped into a 0.5 wt% of HF solution at 20℃.