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基礎技術解説濡れ・気泡・付着・表面処理

ピンホールは拡張モードで解決する

濡れコントロールは、塗工液と基板との界面相互作用が基礎となる。基板上の濡れ性解析は洗浄・乾燥・接着におけるトラブル低減に効果がある。ここではピンホール形成のメカニズムと対策について紹介する。薄膜形成法の一つであるスピンコート法は、その均一性の良さ、および量産プロセスへの適合性のため様々な分野で用いられている。この手法は、大規模集積回路 (LSI) や大型表示デバイスの製造技術であるリソグラフィにおいても、LSI基板上への高分子膜の塗布やパターン現像時のウェット処理に用いられる。ここでは、高分子膜のスピンコート中に発生する大面積ピンホール (濡れ不良) に注目する。使用した高分子膜には、ノボラック樹脂、溶剤、感光剤が含まれている。スピンコート用基板として、6インチサイズのシリコン酸化膜(スピンオンガラス:SOG)基板を用いる。

塗布膜のピンホール不良(中心に点欠陥が存在する)
塗布膜のピンホール不良
(中心に点欠陥が存在する)
半導体デバイス基板上で生じたピンホール不良
半導体デバイス基板上で生じたピンホール不良

上の左図は高分子膜に生じたピンホール写真を示している。ピンホール部は、直径約250μmの範囲にわたり高分子膜が濡れていない。また、ピンホール中心部には大きさ数10μmの異物が存在している。よって、高分子膜が遠心力で基板上を拡がる際、異物によって高分子膜の連続性が失われピンホールが形成される。このピンホールはウェハ中心部より外周部に多く発生し、ウェハ回転時の遠心力が一要因となっている。結果として、上の右図のように、高分子膜の表面張力により膜の収縮が加速され、ピンホールはデバイス製品全体に拡大される。

ピンホール数の熱処理温度依存性
ピンホール数の熱処理温度依存性
SOG膜の表面エネルギーの熱処理温度依存性
SOG膜の表面エネルギーの熱処理温度依存性

ここで、ピンホールの発生メカニズムを考察する。上の左図は、発生したピンホール数のSOG基板の熱処理温度依存性を示している。175℃以上の熱処理によって、ピンホール数が急激に増加する。また、上の右図はSOG基板の表面自由エネルギーの熱処理温度依存性を示している。SOG膜の表面自由エネルギーは熱処理温度の増加と共に低下している。また、熱処理温度の上昇に伴い極性成分は減少し、分散成分は逆に増加する。そして、高分子材料の各成分値に徐々に近くなる。SOG膜の表面エネルギーの減少は極性成分が主な要因である。ここで、高分子膜のピンホールが発生する175℃での値は37.5mJ/m2である。ここで、基板表面の高分子膜の拡張係数S、および濡れ仕事Waは下式で求められる。

Wa = γ1 + γ2 - γ12

-S = γ1 - γ2 - γ12

ここでγ1、γ2、γ12は、それぞれ基板と高分子膜の表面エネルギー、および界面エネルギーを表している。下表に高分子膜の拡張係数Sと濡れ仕事Waを示している。拡張係数Sは熱処理温度範囲で正の値となり、高分子が拡がりにくい状態である。この傾向は熱処理温度の増加とともに強くなる。同様に濡れ仕事Waも熱処理温度の増加とともに減少する。拡張係数Sと濡れ仕事Waの挙動から、SOG膜の熱処理温度の増加に伴い高分子膜のピンホールは発生しやすくなる。

樹脂膜の拡張係数Sと濡れエネルギーWa
樹脂膜の拡張係数Sと濡れエネルギーWa

以上のように、SOG膜上での高分子膜のピンホール発生要因について、以下のように考察できる。

(1)SOG膜上の異物がきっかけとなり, 高分子のピンホール核が形成される。

(2)高分子材料の拡張係数S, 濡れ仕事Waによる考察から, SOG膜の表面エネルギー変化によりピンホールが安定化される。高分子膜のピンホール形成に関しては、基板の表面エネルギー制御が重要となる。

参考文献

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