一般に、マイクロ流体デバイス中にトラップされる気泡は、滞りのない流体の流れに支障をきたすことが知られている。たとえば、人工毛細血管への応用では、血液の遮断や流路の閉鎖など致命的な欠陥につながる恐れがある。ここでは、気泡トラップ機構の解明を目的として、気泡の凝集メカニズムについて実験的な解析を行う。
実験では、(a)マイクロチャネルパターンへの純水滴下実験、(b)高速度カメラ観察下のマイクロチューブへの純水導入実験、(c)環境制御型電子顕微鏡(ESEM)によるチャネル上の気泡観察を行っている。上の左図に(a)、(b)の実験概念図を示す。マイクロチャネルパターン、ホールアレイは膜厚が50μmのDFR(Dry Film Resist)を用いて、上の右表に示すプロセスで作製している。実験(a)では、線幅100μmの直線、Y型、T型、同心円型のチャネルパターンを採用している。実験(b)では、幅200μmのT型チャネルパターンにスライドガラスをのせ、シリンジを用いて純水を導入し、分岐点での純水の接触線を高速度カメラ(250fps)により観察している。実験(c)では、幅10μm高さ50μmの V型チャネルパターン上に、ESEMの冷却ステージを用いて水を発生させ、V型頂点での水の挙動をビデオ撮影している。
上表には実験(a)、実験(b)の観察結果を示している。気泡は直線チャネルでは片方のチャネル端に凝集し、Y型では二つの端に分かれて凝集している。しかし、T型では気泡はチャネルの交点に凝集する。これは、チャネル特有のピン止め効果の影響であると考えられる。同心円形状では、チャネルごとに気泡が凝集し、時間経過と共に気泡が移動する。実験(b)では、T型チューブ内の液体の伝播を観察することができる。また、下図にESEM写真と実験(c)のESEM画像を示す。ESEMにより、10μmのV型チャネルの頂点における気泡生成過程を確認することができる。
線幅100μm、10μmのDFRチャネルパターンにおいて、パターン上の気泡生成過程をin-situ観察により明らかにすることができる。また、T型マイクロチューブ内における液体の伝播を高速度カメラにより観察することができる。