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基礎技術解説リソグラフィ

3次元リソグラフィ(光造形法)による微小立体構造作成

長い年月を経て進化した生物の優れた機能や構造を模倣し、技術開発やモノづくりに活かそうとするバイオ・ミメティックスが注目されている。フジツボの外力から内蔵を護る殻の耐久性及び殻内の圧力を変化させることで海水を還流させることに注目した。ここでは、光造形法を用いて、3次元のフジツボ形状を模倣したデバイスを作製した。そして、作製したデバイスが触覚センサとしての機能を有し、液体を透過するフジツボ形状が変形しないことを検討するために熱変形実験及び外力変形のシミュレーション実験を行った。

フジツボ構造
フジツボ構造
光造形法で作成した構造
光造形法で作成した構造
作製した構造の断面構造図
作製した構造の断面構造図

上の左図に示すフジツボの形状を模倣してデバイスを作製した。作製したデバイスを上の中央図に示す。上の右図にデバイスの構造を示す。下の左図はマイクロ光造形装置を示す。下の右図にデバイスの設計図及び寸法を示す。構造はフジツボの形状を模倣した上部(上半径0.50mm, 下半径1.4mm, 高さ1.8mm, 厚さ0.10mm)と、かさ状の下部(上半径1.4mm, 下半径5.0mm, 高さ0.7mm, 厚さ0.10mm)で構成される。Si基板は有機洗浄を施した。マイクロ光造形装置(He-Cdレーザλ=345nm)を用いてSi基板上にアクリル樹脂のサンプルを造形した。造形後、デバイス内に残った造形液を取り除いた。

マイクロ光造形システム
マイクロ光造形システム
3DCADモデル
3DCADモデル

デバイスの加熱は、時間に対して温度を対数関数的に上昇させ、20分間行った。最高到達温度は220℃であった。加熱後、デバイスの温度が室温になるまで自然冷却させた。下図は実体顕微鏡によって観察した加熱前と加熱後冷却した写真を重ねたものを示す。下図より、デバイスは加熱によって、下部が下に沈み込み、上部の形状が変化しないことが確認できた。

加熱による熱変形観察
加熱による熱変形観察

サンプルの外力による変形のシミュレーションは、3次元有限要素法(FEM)を用いて行った。モデルの固定点はSi基板である。荷重条件は、モデルの側面に1[mN]の外力を加えた。下図に(a)は45°、(b)は0°、(c)は-45°の角度で側面に外力を加えた時のシミュレーション結果を示す。下図より、外力による変形は、サンプル上部の変形は小さく、下部は大きく変形することが確認できた。

FEMによる応力変形解析 (a) 45°(b) 0°(c) -45
FEMによる応力変形解析 (a) 45°(b) 0°(c) -45

熱変形実験及び外力変形シミュレーション結果より、デバイスに応力が働くと体積が変化し、内圧が変化すると推測する。この内圧変化は触覚センサに応用できると考える。また、上部のフジツボ形状を維持することから、応力が働いても液体透過性を維持すると考える。本デバイスは、触覚及び発汗機能を有する人工皮膚などの応用が期待できる。

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