付着性の解析において、付着界面の情報を直接得ることは重要となる。しかし、通常、付着界面の情報を得ることは困難である。ここでは、AFMを用いて、微細パターンと基板との付着界面を直接観察する。下の左図はギガビットクラスの最先端LSIの製造に使用される60nm線幅の高分子パターンである。主成分はスチレン系樹脂である。高分子パターンの表面には、ナノスケールの細かな凹凸が存在する。これは、高分子パターン内に、20~30nmの大きさの高分子集合体が凝集していることに起因する。エッチング用マスクとして高分子パターンを用いた場合、この微細凹凸が加工精度に大きく影響する。この表面の凹凸は、付着界面にも影響すると考えられる。下の右図は、AFM探針を用いて、基板上のパターンを剥離し、付着界面を直接解析する手法を示している。AFMを用いることで、パターン上の特定の箇所を剥離することが可能となる。この技術により、高分子パターンと基板界面との付着状況を知ることができる。
下図は、AFMを用いて、線幅60nmのラインパターンを、広範囲に剥離して付着界面の状態を示した像である。界面には、高分子集合体が1個抜けた空孔(vacancy)が点在する様子が明らかに観察できる。この空孔は、パターン長さ1μmあたりに1個の割合で存在するため、デバイス製造の面からは高い頻度となる。また、この空孔はパターンの付着力に寄与せず、逆に、この空孔に応力集中が生じ付着上不利になると考えられる。このように、AFMを用いることで、ナノスケールでの付着界面の状態を明らかにできる。