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基礎技術解説コーティング

スピンコート法による膜厚10nm以下の自己組織化(SAN)膜の作成

一般的に膜厚10nm以下のキャスト法で形成した超薄膜には,不連続な網目状パターンが現れることが知られており,自己組織化ネットワークパターン(self-assembled network : SAN)構造と呼ばれている(下図)。多くの研究が行われてきたが,シングルナノリソグラフィにおいては,SAN構造を克服して連続的な超薄膜の形成が重要である。ここでは、フォトレジスト膜および低凝集力のフッ素系高分子材料(Nafion)のSAN構造に注目して解析を行った。

膜厚10nm以下の薄膜化現象
膜厚10nm以下の薄膜化現象

実験として,i線用ノボラック系ポジ型フォトレジストおよびパーフルオロスルホン酸(PFSA)を使用した。下表に実験フローを示す。SAN構造は,5000rpmでのスピンコート法によって形成した。さらに,原子間力顕微鏡(AFM)を用いてSAN構造を観察した。また,AFMを用いてレジスト厚膜の表面の形成された硬化層を解析した。

超薄膜形成プロセス
超薄膜形成プロセス
超薄膜レジストにおけるSAN構造の形成
超薄膜レジストにおけるSAN構造の形成

上図と下図のように,レジストとPFSAのSAN構造が明確に観察できる。SAN構造はウェハエッジ方向に連続的に変化している。下図のように,基板の回転中心から離れるに従って剪断力が大きくなるため,薄膜化しながらウェハエッジ方向へと延びていく。そして,この剪断力が連続膜としての凝集限界を上回ることで膜が破れSAN構造の形成に至ると考える。

PFSAにおけるSAN構造の形成
PFSAにおけるSAN構造の形成

次に,下図はAFMによるレジスト厚膜の深さ方向での押込み荷重と硬さ曲線を示す。膜厚353nmのレジスト厚膜に対して,10nm以下の極薄い表面層では,相対的に硬化層が確認できる。

レジスト膜の表面硬化層の解析
レジスト膜の表面硬化層の解析

このことから,下図のモデルのように膜厚が薄くなるに従い,軟化層の割合が減少し,10nm以下の超薄膜では,表面硬化層が支配的になるものと考える。よって,10nm以下の超薄膜においては,スピン乾燥時の硬化層形成が支配的になることによりSAN構造が形成されると考えられる。

SAN構造における表面硬化層の影響
SAN構造における表面硬化層の影響

スピンコート法によって,レジスト膜とPFSA膜にSAN構造が形成されることを示した。また,レジスト膜には10nmの極表面層に硬化層が形成されることから,SAN構造はスピン乾燥時の硬化層形成が支配的であると考察した。

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