塗膜の乾燥時の溶剤成分の液体メニスカスの存在により、凝集性が向上し塗膜形成に貢献する。乾燥時の液体メニスカスは、特定形状の微細構造を破壊することもある。微細加工(リソグラフィ)においては、頻繁に微細パターンが破壊され、しばしば問題化している。ここでは、パターン間に挟まれた液体メニスカスの乾燥過程を可視化し解析する。これにより、微細構造の液体メニスカスの乾燥過程が明らかになる。下の左図のように、2枚のPETパターン間に挟まれた液体メニスカスの乾燥挙動を解析する。まず、PETパターンを水槽内で純水に浸漬し、その後取り出して乾燥させる。パターン間に純水が残存するが徐々に乾燥する。下の右図は平行パターン間のメニスカスの乾燥過程を示している。最初はPETパターン間全体に純水が満たされている。乾燥が進むにつれて、パターン底部付近から乾燥が始まり、メニスカスが後退することで空気が入ってくる。両側のパターン底部から入った空気は中央で結合され、空気トンネルを形成する。空気トンネルにより純水は上部と下部に分離して残存する。さらに乾燥が進むと、パターン上部で純水は凝集し最後に消失する。パターン底部も同様に乾燥し消失する。このように、パターン間の空気トンネルの形成および乾燥は、パターン間に働くラプラス力と、パターン変形による間隔の変化に起因している。
ここで、空気トンネル形成時の高分子パターン断面モデルを下図に示す。空気トンネルにより、パターン上部と下部の純水は分離される。そして、それぞれのメニスカス部においてラプラス力が働き、パターン底部では極端に応力が集中する。特に、高分子パターン底部は、S字状の変形を余儀なくされる。この時、高分子パターンと基板界面の付着力が低い場合は、パターン剥離が界面で生じる。パターン付着力が高い場合は、高分子パターンの凝集破壊が生じ、高分子残渣を生じて倒壊する。このような微細構造の破壊を防ぐには、液体メニスカスにより発生する応力の緩和およびパターン材料の凝集性の増大が効果的である。
参考文献