熱処理により塗膜内の残留溶剤が蒸発し、樹脂等の熱架橋反応が促進し凝集力が増加する。塗膜の凝集性の増加により、応力が発生するが耐久性も向上する。ここでは、塗膜表面の硬さ測定として、原子間力顕微鏡(atomic force microscope: AFM)を用いた押込み試験(インデンテーション)を紹介する。この手法は、微小プローブを塗膜表面から内部へ押込みながら荷重を計測し、硬さの深さ分布を計測する。右図は、力曲線として、塗膜表面層の硬化処理の違いを示している。熱処理法として、オーブン加熱、電子ビーム照射を用いている。表面から内部にプローブを押し込むにつれて、荷重が増加する様子が分かる。この場合、曲線の傾きが大きい場合は、比較的硬化が進んでいることを示す。結果として、熱処理によって、表面近傍は硬化しているが、必ずしも膜内は均一ではないことが分かる。これは熱伝導や溶剤の拡散状況などの違いに依存する。下図は塗膜表面に形成されたプローブの圧痕を示している。オーブン加熱と未処理の場合は、押込み深さは同じであるが、右図のように塗膜表面からの硬さ分布は異なる。