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基礎技術解説分析・評価・解析

AFMによるナノ気泡・ナノ液滴解析

通常、液中での気泡観察に、光学顕微鏡がよく用いられる。しかし、その解像限界は約0.5μm程度であり、それより小さいサイズは観察できない。また、レーザー散乱法によって、液中の気泡数をカウントする装置も存在するが、気泡形状までを把握することはできない。そこで、AFMを用いることにより、光学顕微鏡では観察できなかったナノ気泡を解析することが可能となる。我々はこれまでに、様々なナノ気泡の観察を行ってきた。下の左図にはAFMの基本構造を示している。AFMはナノスケールで制御できるピエゾステージ、気泡を検出するカンチレバー、カンチレバー変位を検出する光学系から構成されている。カンチレバーの先端には、微弱な相互作用を検出するためのAFM探針が装着されている。最近は低価格のAFMもあり、教育機関での実験・実習にも幅広く取り入れられている。下の右図は、基板上に付着したナノ気泡のAFM像を示している。一般に、AFMで観察できる像は、気泡と微粒子(固体)との区別がつきにくい。実際には、両者ともよく似た凸像として観察される。このナノ気泡の同定には、AFMの探針と気泡間に生じる相互作用力を用いる。これには、フォースカーブと呼ばれる特性を、気泡と固体に対して測定する。

AFMによるナノ気泡観察
AFMによるナノ気泡観察
ナノ気泡のAFM像
ナノ気泡のAFM像

下の左図には、ナノ気泡上と固体表面で測定された液中のフォースカーブを示している。ナノ気泡上には僅かに斥力が働いているが、固体表面では大きい引力が作用している。これは、Lifshitz理論によって、気泡と固体表面の相互作用力に差が生じることで説明できる。下の右図には、この場合の測定系の構成を示している。ここで、注目するのは、探針/純水/気泡、あるいは固体の系である。すなわち、系の屈折率の大きさが順序になっている場合は斥力が働き、それ以外の系では引力となる。液中の気泡観察のケースは、相互作用力が正の値となり斥力となる。よって、AFMでの像取得後に、像中心における相互作用を測定し、その斥力および引力を解析することでナノ気泡の同定ができる。このように、AFMはナノスケールでの微小気泡の付着凝集挙動の解析に有効な機器となることが分かる。

ナノ気泡および固体表面でのフォースカーブ
ナノ気泡および固体表面でのフォースカーブ
相互作用力解析(Lifshitz理論)
相互作用力解析(Lifshitz理論)

以上のように、AFMを用いることで、ナノ気泡の形状を明らかにできる。ここでは、さらにAFMの特性を活かし、ナノ気泡の付着特性を解析する。我々はこれまでに、AFMを用いて、微小パターンや微粒子などの付着性を解析するDPAT法(Direct Peeling Method by using AFM Tip)を確立し、微小気泡の付着凝集性の解析へ適用してきた。下図は、レジスト膜上に付着したナノ気泡のAFM観察像である。ここでは、これらのナノ気泡にAFM探針をアプローチして、分離と移動を試みる。AFM探針の制御により、ナノ気泡を分離して移動させた様子も示している。ナノ気泡の分離に要した力をフォースカーブにより解析すると、約3nNとなり非常に微弱な力であることが測定できた。このように、ナノスケールでの微小気泡の制御においても、AFMは有効な解析手段といえる。

AFMの探針によるナノ気泡の分離
AFMの探針によるナノ気泡の分離

AFMを用いて、ナノ気泡だけではなく、ナノ液滴の観察が可能である。下の左図はマイカ(雲母)板のへき開表面に、飽和水蒸気下の環境で凝縮して形成したナノ液滴の観察像である。マイカのへき開表面は結晶格子間の結合力の弱い面が破壊するため、結晶面が露出し極めて平坦な表面となる。よって、基板の表面凹凸ではなく、明確にナノ液滴を確認することができる。観察できたナノ液滴のサイズは119nmであり、接触角は26度である。このように、ナノサイズ領域においても液滴は形成されるため、熱力学的な取り扱いが可能である。ただ、ここでもサイズ効果を考慮する必要がある。下の右図は、純水液滴のサイズ依存性を示している。基板はマイカとSi基板である。液滴サイズの減少とともに、接触角が増大する様子が分かる。これは、サイズの縮小に伴い、表面特性が優勢となるため、液滴がより球形に変形するように働くためである。よって、表面張力は同じであっても、液滴サイズが小さくなると、濡れ性が低下することを示している。そのため、微細加工を主体とする製品などは、さらに濡れ性が低下するため品質への影響を考慮する必要がある。ここでは、ナノスケールの物質に対する取り組みにおいて、AFM解析の有効性を示した。

マイカ上の微小液滴のAFM像
マイカ上の微小液滴のAFM像
純水液滴のサイズ依存性
純水液滴のサイズ依存性

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